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【インタビュー vol.1】江東区に「療保園」をつくりたい!

江東区に「療保園(りょうほえん)」をつくりたい!
療保園いろは 大久保遥さん

大久保遥さんは江東区に日本初の「療保園」をつくろうと奮闘中の28歳。「療保園」は発達に遅れや心配がある未就学児をあずかり保育や療育する場所。幼稚園教諭を辞め、新たな道を目指す大久保さんにその思いを聞いてみました。

大久保 遥さん

◎児童発達支援と保育、習い事も一か所で

「療保園」というとむずかしく感じるかもしれませんが、療育やちょっとした習い事もできる発達障害の子どものためのフレキシブルな保育園です。

発達障害のある子どもは自治体から受給者証が交付され、児童発達支援の施設を利用しています。江東区には民間の児童発達支援事業所が15か所、江東区のこども発達センターが2か所あります。
そのカタチもいろいろで、朝施設に行って給食を食べて帰るタイプや、保育園や幼稚園に通いながら施設に通所している子もいます。

「療保園いろは」は、朝登園してお昼を食べて少し遊んで帰りますが、延長もできて夕方まであずかります。働いている家族に無理なく利用してもらいたいという思いが強いからです。
みなさんに知ってほしいことは、働く選択肢をもてないお母さんたちがたくさんいるということ。子どもだけじゃなく、家庭全体を支援できるような施設をやっていきたいと思ってます。

クラウドファンディングの協力をしてくれた子どもたち

◎家のなかに閉じこもる親子

大きなきっかけは知人に自閉症のお子さんがいたこと。環境が近くにあったことで、一番に感じたことは家族の負担です。子どもの成長は親にとってうれしいものですが、発達障害の子どもを持つお母さん、お父さんは、それと同じくらい心配も尽きません。小学校や中学校に進学したら、社会人になったらどうなるんだろうと、常に将来の不安を抱えています。

また、世間に迷惑をかけたくないと孤立してしまうケースもあります。
私が関わっている子のなかには、家から一歩も出られない自閉症の子もいます。お母さんも一歩も出ちゃだめといって、母子でずっと家の中で過ごしているんですね。お父さんが仕事帰りに買ってきた食材で料理をつくって。想像できないかもしれませんが、生まれてからずっとそうして過ごしている家庭も実際にあるんです。

子どもの支援はもちろんですが、こういった家族をフォローするのが福祉の仕事なんじゃないのかなって思っています。

私は幼稚園教諭と保育士の両方の資格のほか、これまで特別支援に関する研修をたくさん受けてきました。でも、幼稚園教諭としてできるのは、やっぱり幼稚園の間だけのフォローなんですよね。発達障害の子どもは放課後等デイサービスを利用すれば18歳になるまで支援を受けられますが、家族の心配は18歳以降も続きます。「自分が死んだらこの子はどうなるんだろう」とか。そこで、保護者同士がつながって伴走しあえるようなシステムをつくるためにも「療保園いろは」を設立しました。

「いろは」は初めの一歩

保育をする大久保さん

「いろは」は一緒に活動している同僚の保育士と付けました。保育園は赤ちゃんから子育てで最初に関わる部分なので、発達支援や子どものことを保護者と一緒に一つ一つ段階をおって、勉強しながら子育てを楽しんでいこうという思いを込めました。子どもも発音しやすいですし。

「うちの子はこれができない」というスタートではなく「こんなこともできるようになったね」って、一つずつのぼっていきたいです。

私自身、ずっと江東区大島で育ってきたので、恩返しじゃないですが区内に施設をつくりたい思いが強いんです。

実際に施設をつくるためには資金の問題もあり、クラウドファンディングやSNSを通じて支援を呼び掛けている真っ最中で、今年12月か来年初めには開所したいと思っています。
「人に優しく、地球に優しく、みんなを幸せに」をモットーに、がんばっていきます。

(この記事は2020年6月16日にオンライン取材しました)

◎療保園いろはのHP https://irohakids.studio.design/
◎療保園いろは支援プロジェクトページ(2020年6月30日まで)https://readyfor.jp/projects/irohakids