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【屋号ものがたりVol.03】 桜なべ『みの家本店』

五代目の永瀬守さん(左)と弟の富男さん

昭和のレトロな木造店舗と食材へのこだわりを受け継ぐ

店先に掲げた屋号『みの家』の大看板は銅板に金文字。桜の花びらになべの文字をデザイン化したロゴマークは、リン青銅の鍋や食器をはじめ障子や欄間などの建具にも配され、老舗の風格を感じさせる。

創業は明治30年。馬肉は昔からポピュラーなスタミナ食として食されていた。「屋号の由来は文献が無いので詳しいことは分からないが、初代は美濃(岐阜県)の出だと聞いています」とは、平成17年に五代目を継いだ永瀬守さん(51歳)。戦争で跡取りがいなくなった『みの家』を祖父の永瀬實さんが三代目として店を買取り屋号を引き継いだという。現在の趣ある店は戦後の復興景気に沸いた昭和29年、全国から欅、桜、楠木などの銘木を集めて建てたという貴重な木造店舗。

下足番に履物を預け、欅の上がりかまちの奥には藤敷の座敷にステンレスの長いテーブルが2列に並ぶ入れ込み式の大広間。昭和のレトロな雰囲気を残したいと、守さんは修復に修復を重ねてきた。

膝や腰の悪い方のために、高さにこだわった藤製の椅子も用意している。

守さんが先代から受け継いだのは何といっても食材へのこだわり。馬肉は色が美しいことから別名「さくら」とか「蹴とばし」とも言われている。さくら鍋は甘味噌仕立て、関東風すき焼きでいただく。今は高級食材となった馬肉は、カナダ産のほか、青森の契約牧場から直送。それを高湿冷蔵庫で熟成させて旨みを引き出す。鍋には鞍置きから腰にかけての部位、馬刺しはロースの芯を贅沢に使う。「六代目は息子が二人いるので店を継いでくれるかな」と、守さんは笑顔で話してくれた。

桜なべ『みの家本店』 江東区森下2-19-9


※この記事はタウン誌「深川」249号に掲載したものです。料金などは変更になる場合がございます。