「人に報いる」の精神を受け継いで
クリーニング店『東京報洗舎(ほうせんしゃ)』は昭和22年、三代目を継ぐ阿部力也さん(40歳)の祖父・阿部日包さんが焼野原の扇橋で阿部クリーニング店を開いたのがはじまり。今年で72年になる。
初代は戦前に新潟から上京。平久町で親戚が営んでいたクリーニング店に勤めていたが、戦争で招集され終戦後すぐに独立した。昭和27年、株式会社東京報洗舎と社名を変更。「祖父はおそらく、戦争の経験から命の大切さを痛感し、自分の出来ることで社会に奉仕しなければとの気持ちが強く〝人に報いる〟という意味を込めて屋号を東京報洗舎としたと聞いています」と力也さん。
ロゴマークは宅配車でもお馴染みの可愛いフクロウマーク。「これからは皆が幸せになるようにとの願いから母がデザインしたんですが、実は耳があるのでミミズクなんですよね」と笑う力也さん。
初代の頃は自転車で行っていた集配サービスも今は宅配車で法人・個人へと回っている。
その一方で、力也さんは自分なりに〝報いるとは〟を常に模索する。例えば穴が開いてしまった洋服やどうしても落ちないシミなど愛着のある衣類はリフォームの提案や受付もする。「クリーニングの範囲を超えているかもしれませんが、愛着ある洋服は長く着ていただきたい。モノを大切にする気持ちを持ってもらえれば嬉しい。そのための努力は惜しみません」ともいう。
心を込めたサービスで衣類をよみがえらせ〝人に報いる〟初代の精神は、二代目父の世紀さん、そして若き三代目社長へと確実に受け継がれている。
※この記事はタウン誌「深川」247号に掲載したものです。