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【屋号ものがたりVol.08】株式会社 富士見あられ本舗

伝統の味を守りながらもあくなき挑戦へ

 おかきとあられの製造卸業を手掛ける『富士見あられ本舗』の応接室には菓子博覧会で受賞した総裁賞など数々の盾や表彰状がずらりと並ぶ。三代目を継いでいるのは小林正和さん(52)。小学校の卒業アルバムに書いた将来の夢はおせんべい屋さん。24歳の頃から迷うことなく父・俊二さんの元で修業を重ね、跡を継いだ。初代の祖父・小林与三郎さんは、山形県出身。洲崎神社近くにあった久保商店(屋号富士見あられ)から独立。昭和5年に文京区本郷で「小林商店」を創業した。

 戦中は故郷の山形県に疎開したが、再び上京して現在の地で営業を再開。昭和31年には久保商店の屋号「富士見あられ」の暖簾を引き継いだという。

 「原料の質だけは絶対に落とすなと、祖父からずっと言われてきました。店の信頼にもつながりますからね」とは正和さん。

温和な人柄の三代目・小林正和さん

 原料のうるち米やもち米は山形県を中心に使用。時代の波に乗り工場も機械化されたが、創業当時からの商品「京角」や「年輪」といった硬焼きは、今でも天日干しを貫く。天候を気にしながら3~4日、雨季は1週間ほど乾燥を繰り返す。こうすることで機械では作れない独特のヒビが入り、食通たちをとりこにする。

 現在の取引先は近県に150社ほど。新商品の開発依頼も多く、風味や食感など工夫しながら何度も試作を繰り返して作り上げる。

 「いま、取り組んでいるのは取引先の依頼で、トマトやアンチョビ味のおかき。すでに6カ月も試行錯誤しています。今後の課題は若い職人を育てること。それが屋号を守っていくうえでも大切なことですね」と、正和さんは笑顔をみせた。

屋上で天日干し。商品は工場の一角にある直営店でも販売している

(株)富士見あられ本舗 江東区東陽1-10-4 TEL.3644-7872
8:00~18:00/第2・3土日定休


※この記事はタウン誌「深川」255号に掲載したものです。