親子に受け継がれて創業87年
地下鉄門前仲町駅・不動尊入口横にある『遠山薬局』は三代続く町の薬屋さん。初代の相羽喜三郎さんは浅草にあった『遠山薬局』で修業し、昭和7年に独立。喜三郎さんの伯父の故郷が深川だったことから門前仲町二丁目に屋号『遠山薬局』を開業。
「雷門の近くにあった大きな薬局で、父は退職金はいらないから、その代わりに屋号をいただきたいと言ったそうです。暖簾分けのようなものでしょうか」とは二代目の邦子さん。
下町を焼き尽くした昭和20年3月10日の大空襲で店も母も失い、現在地で店を再開したのは昭和28年。兄は医師の道へ。そのため邦子さんは薬科大学に進学して家業を継いだ。
その後、縁あって会津出身の夫・史朗さんと結婚。4人の子どもにも恵まれ二人三脚で店を盛り上げてきた。
薬局は人の命に関わる仕事だけに信頼も厚く、社会奉仕活動の依頼も多い。初代はもちろん二代目の史朗さんは、薬業界はじめ地域の発展にも貢献してきた。
薬局全体が大きく変わったのは昭和49年の薬事法の改定だ。医療機関が院外処方箋を発行することになり、薬剤師のいる薬局ならどこでも薬の調剤ができる現在の形になった。遠山薬局も市販薬だけでなく調剤薬局として生まれ変わった。これを機に、製薬会社で修業中だった長男の信朗さんが三代目として店を継いでいる。
「薬剤師はより専門性の高い知識が求められて、医業の最先端基地になっています」と、江東区薬剤師会の副会長でもある信朗さんは話している。
※この記事はタウン誌「深川」248号に掲載したものです。